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2021.10.19 イベント
附属新潟小学校
今年度の研究について
研究主任にインタビューしました
附属新潟小の「変える力」研究は今年で2年次。今年度は「秋」と「冬」の2回開催であり,「秋」の課題を踏まえて,「冬」には,改善した授業を提案する。
「秋」の研究会を間近に控えた今,志田 倫明 研究主任が,「研究会」「変える力」について語る。
キーワードは「中核的な内容」
教師が大きなねらいをもてば,子供の大事な学びも見えてくる。
-今年度の研究会の見どころや注目ポイントは何ですか。
授業の目標を大きく捉えて授業しようということ,それを全職員が行なっているということですね。どの先生も,1時間の授業で今日の「ねらい」があって,それを意識されていると思いますが,この10時間の単元のねらいは何だろうとか,1年生から6年生まで通す同じ領域のねらいって何だろうとか,そういうことを意識することが大事だということが見えてきました。それを「中核的な内容」と考え,全職員が指導案に一文に表して,それを意識して授業をつくっています。
-総合や学活は単元の大きなねらいが分かりやすいと思いますが,算数でもそうなのですか。
例えば,1年生のくり上がりのある足し算でいうと,1時間目は「8+4のときは,後ろの4の方を2と2に分けて8と2で10をつくって12です」というねらい。それが,2時間目は「4+8になったときに後ろの8の方を分けるのは大変だから,前の4を分けて考えよう」というねらい。「じゃあ【後ろ分け】と【前分け】の二つがあって違うね」となって,1時間ごとに計算の方法は違う。でも,なぜ教師がそんなことやっているかというと,結局10のまとまりをつくるということを大きなねらいとしてやっているんですよね。
1時間ごとに全く別の方法を学習しているように見えていても,10のまとまりをつくるっていう指導内容を子供は一生懸命考えていることになる。そして,その10のまとまりをつくるっていうことは,大きな数になっても,2桁同士になっても同じで,結局,数の学習は10のまとまりをつくることが中核的な内容になっているんですよね。
だから,それを教師が捉えていれば,前を分けるとか,後ろを分けるとか,または両方分けるとか,それぞれの方法にこだわらなくても,大きな構えで子供の考えも受け止められるようになります。
このように,この単元は何を指導する単元なのかということを押さえて授業に向かえているかということが大事なんじゃないかなと思います。そういうことを明確にして,全職員が授業に臨んでいるということが今年度のポイントかなと思います。
-今の話で,昨年度の太陽の図がよく分かりました。
そうでしょう!
-でもやっぱり1時間1時間で見ていたんだなぁと思いました。
1時間ごとでしか見ていないと,前分けさせたいのに,まだ後ろ分けしている子供がいると,「わかっていないんだなぁ」と思って訂正させたりしないですか。それは,教師のねらいがせまいだけで,子供としては頑張って10をつくろうとしているんですよね。だから大きなねらいで見ると,その姿も価値のある大事な学びの姿だって思えますよね。
10をつくるということにみんなが向かおうとしているんだけど,その向かい方が多様なだけなんですよね。ねらいを大きくもつということで,子供の多様性も受け止められる,そんな教師の度量も広げられる視点なのかなと思いますね。
“ゆるやかなつながり”
それを支えるオンラインの研究会
-昨年から紆余曲折あったと思いますが,印象的な出来事はありますか。
1番印象的だったのは昨年度の4月,コロナ禍のときですね。4月の初めに「今年は当面研究業務をストップします」という決断をしました。附属学校なのに研究を止めたという時期が4月から8月まであって,それは自分としては,いろいろ考えたというか,今までやってきたことをやらないと決めてしまった,重大な決断をしてしまったんだなと感じましたね。
-英断でしたね。
そうですね。あのときはいろんなことに制限があって,できないことが多いなら,まともにできる状態になるまで止める。とにかくこの不安な状態を乗り越えて,子供も私たちも安心して過ごせることを最優先にできることをしようという思いでした。まずは,子供に寄り添おうと。
それで,昨年の秋から研究会のことをやり始めて,例年通りにいかないことだらけで,それをどうやって進めていくかということは難しかったですね。
-昨年のオンラインでの研究会は,対面のときには見られなかった授業をたくさん視聴することができてよかったです。
そうですね,結果的によかったですね。運営面でもいろいろな難しいところがありましたが,いろいろなところで乗り越えようとたくさんの職員がたくさんのアイディアをもっているからやれたんだろうなって思います。本当にメンバーに恵まれました。たぶん,職員の何割かが「もう無理だろう」っていうエネルギーになると,実現は難しかったかもしれませんね。
-今年度もオンラインですが,どんな研究会にしていきたいですか。
オンラインになってよかったのは,まずは「つながり」ですよね。オンラインじゃないとつながれない人もたくさんいて,そういう方々とつながることができたのは大きいですよね。オンラインだからこそつながれて,初めて言葉を交わすことができた人がたくさんいて,新しいつながりができたなと思います。そういうつながりがつくれる研究会なのかなって思いますね。
-対面のときも「つながり」はもてましたが,たしかに「つながり」の質が変わったように感じますね。
本当は,もっと授業研究とか授業公開のハードルを下げてもいいんじゃないか,「弱くて付かず離れずの,フラットでゆるやかなつながりをつくっていきたい」という思いをもっていて,オンラインはそれにピタッときたんですよ。
どこからでもふらっと集まって,そこに集った人たちで学びをつくっていきましょう,という。対面でやってきたことを否定するというわけではなく,オンラインっていう新しい研究会のアプローチの仕方ができるのであれば,そっちはそっちの良さを生かして研究会をしていきたいなと思いますね。
「変える力」とは
-「変える力」とはどんなものなのですか。
今の話のように,研究会のあり方が変わっているのは,いろんな環境が変わっているからだと思うんですけど,環境の変化によって生活の仕方とかいろんなもののあり方が変わっていますよね。こういった変化はもっと激しくなってくると思います。その変化に対応する力をつけたいという思いでやっています。
今まで出会ったことのない変化に対応するには2つポイントがあって,1つはどこかにある正解を探してそれを当てはめて問題解決しよう,ってことはもうできなくなってきているということです。自分の中に既にあるものを当てはめるとか,自分の中にはないどこかにあるものを当てはめてその通り解決していくということは,たぶんもう通用しないだろうなと思うと,自分の中にあるものを組み替えたり,組み直したりして,自分がその状況に合わせて変わっていくしかないんじゃないかと思うんです。
分かっているつもりのことを分かり直していく。そして違うものに変えていく。そうやって立ち向かっていくしかないと思い,そのことを「知を更新する」と定義して研究を進めています。
2つめは,今話したことは1人ではなかなか難しいから,自分以外の誰かと一緒に協働して知をつくり変えていくことが大事だということです。できる限り自分とは違う考えや,視点,立場をもった人と一緒に協働した方が,いろんなことをよりよく変えていくことができる。そういうことを小学校のときから経験させたいですね。
そういう,今までにはなかった問題解決の力が,「変える力」というものですね。
「その子らしさ,その先生らしさ」を見てください。
-最後に,ご参会の皆様に一言お願いします。
授業のあり方も,これからこうあるべきっていうのがなくて,多様化していくと思います。私たちは,「変える力」を高めるという方向性を職員で共通してもっています。でも,私たちが公開する一つ一つの授業のアプローチの仕方はちがいます。個性豊かな教員と子供たちの個性によって本当に様々です。
その先生らしい,そしてその学級らしい アプローチの仕方を見てもらえたら嬉しいと思います。
また,参加されている皆さんも,目の前にその子らしい子供たちがいて,そしてその先生らしさがあると思うので,当校の研究会で一緒に授業を考えて,自分らしさや自分の学級らしさが光る授業に役立ててもらえたらなと思います。
ここには答えはないけれど,一緒に考えていけるようなヒントがあります。そんな授業を提案できたらなと思っています。「その子らしさ,その先生らしさ」でつくっている研究会をぜひご覧になってください。
そして,皆さんと一緒に考えていきたいです。
-とても楽しみになりました。ありがとうございました。
ありがとうございました。