本当の友達とは?

2024.08.11

 子供は、親切、思いやりなどの道徳的価値が大切であることは知っています。道徳科の指導においては、子供が教材の理解に留まるのではなく、教材を通して自他の考え方や感じ方に気付く中で、道徳的価値の理解を深めることが大切です。 今年度の研究では、登場人物の行為を自他の価値観と照らし合わせ、道徳的価値の理解を深める子供の育成を目指しています。道徳的価値の理解を深めるとは、「何かをしてあげることが親切だと思っていたけど、見守る親切もあることが分かった。相手の気持ちを分かってあげられる人になりたい」のように、道徳的価値について、新たな見方が付加され、実践意欲を高めることを指します。

 1学期は、『友だち屋』とその続編の絵本を用いて、「友情、信頼」の授業実践をしました。以下、ねらいと指導計画です。今回は、道徳2時間、図書1時間の計3時間で単元を構成しました。


 1時間目は、『友だち屋』を読み聞かせ、子供たちの反応を待ちました。すると、

・友達って一緒に遊んでお金をもらうような人じゃない。

・相手から遊びに誘ってもらったら友達だ

・お金とかを取らないで自然となれるのが友達だ

などの多様な友達観を表出しました。出てきた友達観について、教師が納得できるかを挙手させると、子供たちは、納得できるものもあれば、「これはちょっと違う」「もう少しこういうものもある」のように納得できないものもある様子でした。このような姿を見とり、「友達とは、どんな人か?」という学習課題を設定しました。その後、やっぱりお金を取るキツネは、おかしいこと、そして他にもおかしいことがあるという様子を見とり、「おかしいと思ったところは、どこですか」と問いました。子供たちは、以下のように問題点とその原因、解決策などについて話し合っていきました。


 2時間目は、『さよならともだち』の絵本を読み聞かせました。キツネが友だち屋を始めたきっかけ(キツネは、立派な大人になるためにキツネ山から降りてきていて、一人寂しかったこと)が後日談として描かれており、『友だち屋』とのつながりが最もあると考えたからです。

 その後、5冊の続編を提示しました。キツネとオオカミが共に過ごしながら、仲を深めていく様子を通して、友達として、相手のことを本当に大切にしたり、心から心配したり、ときには厳しく注意したりするといった信頼関係の深さに気付かせたかったからです。このシリーズは、『友だち屋』に始まり、全14冊ありますが、キツネとオオカミの素敵な姿が描かれていること、適切な情報量を与えたかったことを考え、5冊の本に限定しました。

 感想を書きたいという子供のつぶやきを拾い、Google Classroomにどんどん書き込んでみるように伝えました。子供にとって、自他の感想を共有できるよさがあり、教師にとっても子供の着眼点を見とったり、3時間目の意図的指名につなげたりできるなどのよさがあります。

 なお、ここでは、図書の時間に絵本として子供に出合わせているため、友情、信頼に直接関係しない「イラストがきれい」「〇〇という表現がいいと思った」「お話の展開が面白かった」などの感想もたくさん出てきました。こういった子供の反応も尊重しました。

 3時間目の導入は、シリーズ本を読んだ感想を子供に発表させました。キツネとオオカミの両方に「素敵」な点があることに気付かせるためです。発表を聞いていく中で、2時間目の図書の時間には、「素敵」という視点で見ていなかった子供もそれぞれの「素敵」に気付きました。ここで、両方の「素敵」を実感する時間をとることが次の発問につなげるために重要です。

 子供たちは、他者と友達観を交流し合いながら、自分はキツネとオオカミのどちらと友達になりたいのかについて考え続けました。上記の子供の発表は、一例ですが、以下のような人と友達になりたいと解釈できます。

・サプライズのように普通の人にはしないようなことをしてくれるような人

・勇気をもって自分のことを叱ってくれるような人

・自分がダメなことを注意したときに、心を入れ替えてくれる人

・落ち込んでいるときに励ましてくれる人

・嘘を付いたり、悪いことをしたりしても謝れる人

 以下は、3時間目の板書です。多様な考えを交流する中で、「〇〇さんに付け足しで」「〇〇さんとは、ちょっと違うんですけど」と互いの考えをつないでいきました。このとき教師は、子供が考えを可視化できるように矢印でつないだり、必要に応じて子供に問い返し、キーワードを書くことで抽象化したりしていました。

 終末の振り返りでは、「自分にとっての本当の友達」を問いました。子供は、これまで話し合ってきたことを基に自分の友達観についての考えをまとめました。

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