和菓子の今昔物語 町の変化から見る和菓子の魅力(小単元Ⅱ)

2025.03.12

前回に引き続き、今年度の総合の実践をご紹介します。

 小単元Ⅱでは、子供は金巻屋が作る和菓子について学び、和菓子の作り手の気持ちと買い手の気持ちがつながっていることを理解しました。そして、小単元Ⅲでは子供たちは探究課題を理解するために、更に探究を進めました。子供は、お店が変われば、そのお店の作り手が考えていることも違うのかという新たな疑問を生み、金巻屋以外の和菓子屋と交流することを望みました。子供からは他にも板書にあるような様々な学習活動が表出されましたが、そこには自分たちが本当にすべき学習は何かを立ち止まって考え始める子供の姿がありました。つまり、この子供はこれまでの学びとこれからの学びとをつなげようとしているのです。この子供の姿をきっかけに学級でこれまで明らかにしてきたことと、これからする学習はどのようにつながるのかを整理し始めたのです。このように対象の探究を経る中で、自分たちで課題を吟味したり、学習活動を選択していく姿が見え始めました。つまり、探究が自律化し始めていく瞬間であると言えます。

 「お店が変われば、そのお店の作り手が考えていることも違うのか。」という新たな課題を解決するために、3つの和菓子屋と交流し、収集した情報を整理・分析しました。作り手から聞いたこと、お店の商品を食べて感じたことなど子供一人一人が交流を通して蓄積していった情報を基に、3つの和菓子屋の共通点や相違点を見いだしました。そこから見えてきたことは、作り手が変わっても一つ一つの和菓子に思いを込めているけれど、こだわっているものは違うということです。具体的には、あんこの味を突き詰めること、洋菓子の要素を和菓子に取り入れるなど、そのお店独自の取組です。そして今回、交流した和菓子屋はどれも創業100年以上であることが分かり、子供たちの中で100年前から現在までどのように和菓子作りを続けているのかという新たな疑問が生まれてきました。子供が和菓子の過去に目を向け始めたのです。

 3つのお店と交流した子供は、3つのお店が100年以上前からあることと、和菓子は今も変わらず作り続けられている事実から、和菓子が今まで残り続けてきたことにはどんな理由があるのかを考えました。以前の交流で子供は、作り手が和菓子の形や味を時代に合わせて変えていることを聞いています。具体的には、作り手があんこの味を時代や和菓子を食べたお客さんの反応によって少しずつ変えているのです。子供は、和菓子が時代を経て進化していくことに驚くと共に、作り手の和菓子を新たに創りだそうする努力や思いに感銘を受けました。そして、和菓子が100年以上生き続ける上で味や形を変えることは重要であると考えつつ、大きく変えるとお客さんが悲しむ場合もあるから、あえて変えないことも大事であると考えました。そこから、和菓子は時代やお客さんに合わせ、少しずつ姿を変えながら現在まで生き続けていることが共有されました。

 対象を違う視点で見ることで、子供は同じ対象でもこれまで見えなかった部分が見え始め、対象に関する新たな認識をし始めます。新たな知識が加わることだけでなく、これまで獲得した知識と関連させることで対象の新たな価値を見いだしていくのです。そのためには、単元を貫く課題が子供の中にしっかりと位置づくことが必要です。単元の軸を教師が設定することで、子供は方向性を見失わずに学び続けることができます。それの軸の太さは単元時間に比例し、子供の学びを支えるものでなければいけません。本実践において、小単元Ⅱでは子供は現在という視点での対象を見ていましたが、小単元Ⅲでは過去という視点で対象を見たことで、これまで自分たちが食べていた現在の和菓子には作り手の思いが詰まっていて、時代を超えて受け継がれてきていることを理解しました。そのような子供は対象の未来を考え始め、小単元Ⅳでは視点を未来に変えて探究を進めていくのです。

このページのトップへ