自ら設定した問いを探究する授業 -6年 国語「きつねの窓」-

2024.08.10

 今年度、私が目指すのは、「自ら問いを設定しながら読み、複数の情報を関連させながら読みを深める子供」の育成です。6月に実践した授業を基に、成果や課題についてお伝えします。

 今回扱った教材は、「きつねの窓」(安房直子:作、教育出版6年)です。子供たちは、4年生の時に安房直子さんの「初雪のふる日」を学習しています。どちらの物語も、少し不思議なところが多いファンタジー作品となっています。「きつねの窓」は、以下のような内容となっています。

 以下、授業が行った「きつねの窓」の教材分析です。「登場人物の人物像」「物語の設定(時・場・展開)」「色の表現」の3つの観点を基に、子供がどんな問いを設定するか、どのように読みを深めさせるかを構想しました。

 子供たちは、「問いづくりを中核とした授業」を行うのが初めての経験なので、こちらから「問いのつくり方」を提示しようかと最初は考えたのですが、結局提示するのはやめました。子供たちが考えた素朴な問いから、価値のある問いを見付け出していってほしいと考えたからです。

 提示はしなかったのですが、こちらが子供たちの問いを想定する上で有効に活用することができました。

 問いづくりを中核とした授業を、以下の①~⑤のステップで構想しました。そして、物語の魅力をまとめ、それを友達と紹介し合うという言語活動を設定しました。

 授業の実際を紹介します。子供たちは、以下のような問いを設定しました。そして、似たような問いを追究しようとする仲間を見付け、共に課題解決に向かっていきました。

 ある抽出グループの追究の様相です。このグループは、「なぜ、ききょうの花で指を染めると、大切な人が映るのか?」と「どうして、たくさんある花の中で、ききょうの花なのか?」という問いについて考えていました。

 なかなか本文から明確な根拠が見つからず、悩んでいましたが、A児が「花言葉とか、絶対関係しているよね」と発話します。A児は、ききょうに単なる花以上の意味を感じ、問いを追究する方向性を見いだします。

 その後、「ききょうの花言葉が『永遠の愛』である」という情報と、「青は『悲しみ』を表現する色として使われる」という情報とを組み合わせて新たな考えを生み出すことができました。

 そして、追究していた問い「ききょうの花で指を染める理由」の答えを、「ききょうの花言葉が『永遠の愛』とか『変わらぬ愛』とかずっと愛してるみたいな意味で、青色の意味が『悲しみ』だったから、もう会えない人とか会えないものとか、そういう大切に思っていた愛していたものが、窓で見えるんじゃないかなっていう結論になりました」と考えて発表しました。A児は、問いの追究を通して、「青いききょうが物語においてどのような意味をもつのか」について、読みを深めることができました。A児は、自分なりの見方や感じ方に基づいて「きつねの窓」を探究し、新たな価値を創り出すことができました。

 一方、働き掛け2の全体共有の場面では課題が残りました。授業者は、子供たちが悩んだり迷ったりして根拠を見付けられないという場面での発問を想定していたのですが、子供たちは問いを追究する中でそれぞれがしっかりと自分たちの答えを導き出していたのです。そのため、深い読みに誘うような発問をすることができず、発表会のような形となってしまいました。この全体共有の場面は、働き掛けの再考の必要性を感じました。

 また、追究を子供に委ねると、思い込みで読み進めてしまうこともあることが分かりました。例えば、板書にもありますが、「なぜ、きつねはぼくから鉄砲をとったのか?」という問いを追究していたグループが複数ありました。すると、明確な根拠がないにも関わらず、「きつねはぼくに恨みをもっている」「母きつねを殺したのはぼくだ」というように読んでしまいがちになってしまうのです。このような場面を想定しておき、教師が適切に出ていくことも大切だと思います。そのようなポイントを、教材分析の段階で明確にしておく必要があると感じました。

 今回の実践を通して、授業づくりのポイントとして明らかになったのは、以下の4点です。


 授業における教師の出には課題がたくさんありましたが、子供が問いを追究する姿には、大きな可能性を感じました。私がこれまで行ってきた授業では生み出されない独創的な考えがたくさん生まれたと思います。その子供たちの考えをより生かすことができるように、今回の反省を基に、よりよい授業を創り上げていきたいと思います。

 11月の初等教育研究会で、さらに素晴らしい子供の姿をお見せしたいと思います!ぜひ、初等教育研究会にお越しください。お待ちしております。

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