個人研究

社会科: 小黒 健太

附属新潟小学校5年目。小黒健太(おぐろけんた)と申します。

研究教科は社会科です。令和6年度は高学年社会科を担当し、初等教育研究会では、6学年の社会科授業を提案します。

社会科は、子供が「当たり前であることのありがたみ」に気付いていく教科です。例えば、「警察署は,消防署と協力してして事故が起こったときに仕事をしたり、地域の人と協力して事故を防いだりしているんだ。警察の人や地域の人があんなに頑張っているから、僕たちのまちは安全だし、みんなは安心して暮らすことができるんだね」という理解です。その気付きこそ、子供たちをよりよい社会の創り手に育てることにつながると考えます。

また、子供が社会科を通して学んだことを生活に生かす姿を大切にしていきます。今までの社会科授業で難しかったことを一人一台端末で実現できるようにしていきます。

もちろん、①「れ?」という不思議、「それでいいの?」という疑問、「~ん,どうしよう。」という悩み、「っ?」という驚き、「ー、すごい!」という感動を子供たちから引き出し、問題意識を高める授業②対話を通して子供たちが納得解・最適解を見いだす授業もこれまで同様に大切にしていきます。

多くの皆様から御批正をいただければ幸いです。

書籍

共著:STEP UP 全学年対応社会科授業アイデア

<今年度の研究キーワード>

「社会科×個別最適な学び」「社会科×学びを生活に生かす」「社会科×ICT」

子供も大人も楽しい社会科を一緒につくっていきましょう。各種ご依頼大歓迎です。ご連絡をお待ちしております。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

メール:oguro@fusho.ngt.niigata-u.ac.jp

日本国憲法とわたしたちの暮らし〜新潟駅と日本国憲法との関係を探究する授業〜

2024.09.06

社会科では、子供が社会生活の理解を図り、社会の進展に貢献する態度や能力を身に付けさせることを目的としています。そのため、複数の立場に立って社会的事象の意味を考える学習が大切にされてきました。

しかし、子供は追究の中で複数の立場と出会い、多角的に社会的事象の意味を捉えるものの、自分の生活の中に社会的事象を意味付ける姿には至りませんでした。

その原因は、自分と異なる立場で社会的事象の意味を捉えさせる指導にあります。社会には外国人、高齢者、障がい者など、多様な人が生活を営んでいるため、自分と異なる立場の生活には目に留まりやすいといえます。

そのため、社会的事象の意味を多角的に考えることを通して、社会生活を理解させるという点においては効果的でした。しかし、自分と異なる立場の生活を注視させてしまうため、社会的事象の意味が子供自身の生活とどう結び付くのかを見いださせる点においては不十分さが見られました。

そこで、異なる立場に加え、自分の立場でも社会的事象の意味を捉えさせる指導に改善しようと考えました。具体的には、自分にとってどのような意味があるかを考えさせるために、社会的事象と子供たちの暮らしとの関わりを問います。子供は、自分とは異なる立場から自分自身の立場で材を捉え直し始めます。そのような子供は、自分自身の視点で情報を見つめたり、意味付けたりするのです。このようにして、目指す子供を具現していこうと考えました。

                                              

日本国憲法の学習を終えた子供と次のようなやり取りがありました。

新潟駅で何を調べたらよいか、見通しをもった子供に駅の見学を設定しました。子供は、それぞれのiPadで、新潟駅から日本国憲法に関わる情報を収集していました。

                                                        

見学後、情報を整理する時間を設定しました。

特定の立場で日本国憲法の役割を多角的に捉えているものの、自分の生活の中での役割は見いだせていませんでした。 そこで、日本国憲法の役割を、自分の生活の中で捉え直させるために、 次のように発問しました。

                                    

「新潟駅のどこを見れば、日本国憲法と高学年3組が関係しているといえそうかな。」

                                    

子供は、友達と協働したり、生成AIを活用したりするなどして、日本国憲法と自分の生活とのつながりを見いだしていました。

そして、授業の最後、次のように記述していました。

これは、特定の立場の人だけではなく、自分の生活の中にも日本国憲法が関係していることを自覚した姿といえます。

初等教育研究会では、本実践を踏まえながら、歴史学習に挑戦します。皆様のご参加をお待ちしております。

それいけセーフティな秘密調査隊-密着!警察24時-

2023.01.28

これまでに,学校の周りの様子,新潟市の様子,新潟市の生産や販売の仕事について学習してきた子供たち。

今回の学習は,新潟市の安全を守る働きについて学習します。

単元の導入として,新潟市の事件や交通事故の経年変化をマスキングしながら,段階的に提示しました。

子供たちは,新潟市の事件も交通事故も年々減ってきたことに驚きました。そのような子供たちに,これから考えていきたいことや調べていきたいことを問いました。子供たちは,

「どうして,新潟市の事件や事故が減っていったのか」「どうやって減らしていったのか」「だれが減らしたのか」

などと疑問の声を上げました。そこで,子供たちは,

「新潟市の事件や事故は誰がどうやって減らしていったのか」

という学習問題を設定しました。

子供たちは,学習問題について考え始めていたので,予想をする活動を設定しました。そして,子供たちの予想を全体で共有しました。

考えていることが正しいのか確かめたいという思いをもった子供たち。

そこで,まずは,子供たちが一番知りたいと思っている警察の取組について調べ学習の場を設定しました。

調べ学習を通して,警察の様々な取組を知った子供は,通信指令室の仕組みに疑問をもちました。そこで,

「小黒先生が住んでいる西蒲区で事件や事故が起こるのに,どうして,110番をすると中央区の新潟県警察本部につながるのだろうか」

という学習問題を設定し,新潟県警察本部に行って疑問を解決しに行きました。


見学の最後に,新潟県警察本部の職員の方から次のようなお話がありました。

新潟市の事件や事故は,減ってきています。でも,それは,警察官が頑張っているからだけではなく,地域の人と協力していることも大きな原因の一つです。地域の人はどんなことに取り組んでいると思いますか。ぜひ,調べてみてください。

そこで,今度は

「新潟市の事件や事故を減らすために,地域の人々はどんなことをしているのか」という

学習問題を設定し,調べたり考えたりする活動を設定しました。

また,警察本部の職員から,地域の人々の取組の一つとして,「こども110番の家」を教えてもらいました。そこで,冬休み中に自分の近所の「こども110番の家」がどこにあるのかを調査する活動を設定しました。

冬休み中に子供が提出した調査カードは下のとおりです。

冬休み明け,学校の周りに住む地域の人々に来校していただき,地域の安全を守るために取り組んでいることを教えていただきました。


地域の安全を守るために,警察,地域の人々の取組を調べた子供たち。学習問題「新潟市の事件や事故を減らすために,誰がどんなことをしているのか」について,子供たちに問いました。この時の子供たちの記述は以下のとおりです。

ここまでの学習では,多くの子供たちは,

「新潟市の事件や交通事故を減らすため,警察や地域の人がそれぞれ活動したり,協力したりしている。そして,それは自分の生活とも関わっている」

と認識しています。しかし,

新潟市で,いつどこで,どんな事件や交通事故が起きたか,起きそうかは知らない状態です。

そこで,警察署員に来校してもらい,新潟市で起きた事件や交通事故の事例を紹介してもらう場を設定ました。また,事件や事故の内訳も提示しました。

この後「みんなの近所には事件や事故が起こった場所がありますか。みんなの近所には事件や事故が起こりそうな場所はありますか」と発問しました。

子供からは,「あるある,超暗い所がある」「私の近所では事故が起こったことがある」など,自分が暮らしている生活地域について想起しました。

そして, 子供の生活地域の現状への関心が高まったと判断し,「これから考えたいことや調べたいことは何ですか」と問いました。

一人の子供が「私たちの家の周りの危険な場所を調べたい」と発言しました。他の子供たちもその思いに共感していました。そのため,

共通の課題「自分の近所では,事件や交通事故が起きた場所はどこか。起きそうな場所はどこか」

を子供と共に設定しました。

ただし,子供の様子を見ると,調査活動への意欲を高めているものの,調査活動への具体的な見通しをもっていないことが見受けられました。

そこで,調べる視点と方法とを確認する場を設定しました。

まず,調べる視点として,

①危険な場所,②時間帯,③危険だと思った理由

を共通理解しました。

次に,調べる方法として,

①家族や近所の人にインタビューする,②実際に行って確かめる,③グーグルアースで調べる

を共通理解しました。

そして,生活地域を調査する期間を1週間設け,家庭学習の時間を使って調査する場を設定しました。子供たちが調査を通して作成した調査カードは,下のようにロイロノートの提出箱に入れさせ,回答共有しておきました。

ここまでが,授業動画前の子供の学習の様子です。ここから先の子供の姿は,授業動画をご覧ください。

最後に,授業動画の後の子供の振り返りの記述をご覧ください。

2月4日(土)の初等教育研究会Winterでは,社会3年「それいけ!セーフティな秘密調査隊」の協議会で,皆様からご批正いただければ幸いです。

協議会でお待ちしております。

それいけ!グッドテイストな秘密調査隊~調査報告その6~

2022.10.14

8つのお店の名前を紹介し,これらに共通することは何かを問いました。子供たちは,インターネットで調べると,イチジクを使った料理を提供してくれる店であることが分かりました。

そこで,班ごとに旅館,割烹,ジェラート屋,ケーキ屋,カフェなど8つの店を分担し,電話取材することにしました。取材では,①どうして西蒲区のイチジクを使っているのか,②どれくらいの量のイチジクを使っているのか,③どれくらいの人が食べたり買ったりしているのかということを聞きました。

取材後,分かったことを学級全体で共有しました。

子供たちの振り返りです。

明日はいよいよ初等教育研究会Autumnです。皆様のお越しをお待ちしております。

それいけ!グッドテイストな秘密調査隊~調査報告その5~

2022.10.12

イチジク農家のHさんが作ったイチジクは集荷場から直売所,スーパーマーケットに行くことが分かりました。

「イチジクを売っている場所を見てみたい」「買う人にイチジクを買う理由を聞いてみたい」

という思いをもった子供たち。

まずは,子供たちとお客さんがイチジクを買う理由を考えました。

「甘いから」「好きだから」「美味しいから」「安いから」「友達が美味しいと言っていたから」「家族が好きだから」など理由を予想しました。

子供たちから出てきた予想を基に,次のようなシートを作成し,班ごとに渡しました。そして,一番当てはまる理由にお客さんからシールを貼ってもらうように伝えました。

今回は,西蒲区にある直売所とスーパーに取材に出掛けました。

30分ほどの調査活動でシートは次のようになりました。

班によって,場所によってインタビュー人数に多少のちがいはありましたが,「おいしいから」という理由が一番多いのは,どの班にも共通していました。

買う人へのインタビュー後の子供たちの振り返りです。

イチジク農家Hさんたちが作ったイチジクが販売されている様子,お客さんがイチジクを買っている様子をお客さんのイチジクに対する思いを学ぶことができました。

イチジクは生食以外にも食べる方法があります。次回は,イチジクを使って調理している人々を取り上げ,地域の人々に食べられている様子を調査します。

それいけ!グッドテイストな秘密調査隊~調査報告その4~

2022.10.10

当日は,秋雨の降る中でしたが,1時間かけて新潟市西蒲区にあるイチジク農家Hさんのイチジク畑に見学に行きました。

子供たちは,見学しなければ分からないイチジク畑の様子,周りの様子,収穫の様子,農家の思いなどを学ぶことができました。

イチジク農家のHさんが作ったイチジクはこの後,どこに行くのでしょうか?子供たちの追究はまだまだ続きます。

それいけ!グッドテイストな秘密調査隊~調査報告その3~

2022.10.09

子供たちは,前時までにイチジク農家がどのようにしてイチジクを育てているのか調べたいという思いをもったので,イチジク農家さんの写真を提示しました。

そして,子供たちは,イチジク農家の仕事の様子を調べたいという思いをもっていたので,一年間の仕事の様子と収穫時期の一日の様子が分かる資料を配信しました。


2つの資料には,子供たちにとって難しく,聞き慣れない言葉もあったので,まずは,インターネットや国語辞典などで言葉の意味を調べる活動を設定しました。そうして,イチジク農家の仕事のおおよその様子を理解していきました。授業後の振り返りです。

この振り返りのように,子供は,資料を通して,農家の仕事の様子について分かったことがあった一方で,もっと知りたい,よく分からないという思いをもちました。そして,イチジク農家のHさんに会いに行きたいと思うようになりました。そこで,見学活動を設定し,直接畑を見たり,話を聞いたりすることにしました。(続く)

それいけ!グッドテイストな秘密調査隊~調査報告その2~

2022.10.09

それいけ!グッドテイストな秘密調査隊~調査報告その1~

2022.10.03

地域に見られる生産の仕事の学習の導入部分を行いました。

まずは,野菜,果物,花の写真を段階的に提示していきました。

そして,段階的に,「共通していることは何ですか」と発問しました。

子供は,「食べ物」「野菜」「土がある場所で育っている」「植物」などと答えていきましたが,花が出た時点で「ん?食べ物ではなさそうだ。野菜でもなさそうだ。果物があるから土がある場所で育っているでもなさそうだ。じゃあ,共通していることは,植物ということかな」と答えを1つに絞っていきました。その後,答えを提示しました。

ここで,農産物地図を提示しました。

このように,子供は,1学期に学習した市の様子の住宅地が集まっている場所,田畑が集まっている場所での学習を想起しながら,市の特色と産地の分布とを関連させていました。 以下は子供たちの振り返りです

新潟市西蒲区は,色々な種類の農作物が生産されていることが分かりました。さて,次回は,西蒲区で生産されている「ある農産物」が登場します。子供たちがどんな反応をするのか,今から楽しみです。

~ごみとみんなのストーリー~これまでのストーリー③

2021.10.30

目の前のごみ箱から埋立処分地まで,どのようにごみが処理されているのかを知った子供たち。

ここで,新潟市のごみの分別に着目させました。

この体験活動を布石として,働き掛け1(ターニングポイントの前後の事実を提示し,これからみんなで考えたいことを問う)を打ちました。

ここでは,働き掛け1後の板書を紹介します。

詳細は,授業動画の最初にスライドを付けて説明してありますので,ご覧ください。

子供たちは「なんで昔は6分別で簡単だったのに,わざわざ今はごみを10種13分別にしているのかな」「なんで昔は無料だったのに,今は有料なのかな」という学習問題に,どのように向き合ったのでしょうか。そして,どのような解を見いだしたのでしょうか。

授業動画をお楽しみに!!

~ごみとみんなのストーリー~これまでのストーリー②

2021.10.28

家庭のごみ調べを通して,自分たちの家でどんなごみがどれくらい出されるのかに気付いた子供たち。

自分の家からごみはどこに行くのかなあと疑問をもちました。子供たちの中にはごみステーションの存在を知っている子がいたので,学校の周りには,どこにごみステーションがあるのかを調べるために,地域探検をしに行きました。そして,調べて分かった場所を地図上にプロットしていきました。

場所が分かると,子供たちは,どうしてごみステーションが集中しているのか,集める人はこんなにたくさんの場所をどうやって回っているのかなどの疑問をもちました。子供たちにどうやって疑問を解決したいかを聞くと,集めている人に聞きたいという声が上がりました。そこで,ごみを集めている方にインタビューする時間を設けました。

ごみを集めている方にインタビューする活動を通して,疑問を解決した子供たち。その後,ごみ収集車が向かう清掃センターがどのようにごみを処理しているのかという新たな疑問をもち,清掃センターを見学したいという思いをもちました。

コロナ禍なので,見学は叶いませんでした。しかし,見学の際に使うDVDをいただくことができたので,学校で子供たちと視聴しました。

燃やすごみを灰にしたり,燃やさないごみ・粗大ごみを細かく砕いたりして処理していることを知った子供たち。

DVD視聴後,「このままだと,清掃センターは,燃焼灰や不燃物でいっぱいになってしまうよね。でも,そんな様子は映像にはなかったけれど…」と呟く子供がいました。その呟きを全体に広めると,子供たちは「ごみはこの後,どこにいくのかな」と新たな疑問をもちました。

ここもコロナ禍で見学は叶いませんでしたが,資料やパンフレットをいただくことができ,それらを使って調べ学習を行いました。調べ学習で分からなかったことは電話でインタビューをさせてもらいました。

このように,子供の目の前にあるごみ箱から埋立処分地までの処理の様子を学習することができる単元を構想し,実践しました。子供は目の前にある自分たちのごみがこの後どうなるのかなと,追究意欲を高めながら学習を進めていきました。

次回はいよいよ研究授業に関わる活動を紹介します。

to be continued…

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